結局はやっぱり「基礎の積み重ね」が自分を成長させる

モンスターハンターというゲームをご存じでしょうか?

カプコンから発売されている、雄大な自然の中でモンスターを討伐するアクションゲームシリーズで、オンライン接続することで最大4人のチームを組んでモンスターに立ち向かうこともできる・・・というゲームです。

モンスターハンターとは?

会社員だった頃、社内でモンハンが流行していて、私も、PSPを片手に会社の同僚とチームを組み、お昼休みや仕事の後に度々狩りに出かけていました(狩りに出る=モンハンのゲームをすること)。

ゲームはとても楽しかったのですが、最大の欠点が、そもそも私のゲームスキルが異常に低かったのと、何をどうしたら強くなるのかあまり把握してなかったこと。

音ゲーやリズムゲーは比較的得意なので、感覚的に操作の仕方が分かったりするのですが、RPGやアクションゲームは、地図が覚えられないとか、自分がどこにいるか分からなくなるとか、「あんた、そこから?」というレベルの致命的なセンスの無さでした。でも「なんか楽しそう!」という雰囲気だけで遊んでたのだけど…。

そんな状況だったので、チームで戦う時は、私の戦力はゼロというよりは、足手まといになるためむしろマイナスになるという有様。よって、モンスターが現れた時は、私は基本狩りの場にいることはなく、

「目時さん、隣のフィールドで薬草取ってていいですよ♪」と言われ、

他のメンバーがモンスターの討伐を終えて、

「目時さん、終わったんで肉取りに来てください!」という声を聞くと、有難く報酬の肉の塊をいただく。

その時は「やった!アイテム増えた!」と嬉しい気分になるのですが、それが続くと、やはり少し後ろめたさが出てくるのです。

それも当然。結局は自分の努力ではなく、周囲の人のお膳立てによって引き上げてもらった場所だから。

基礎がない状態で外に放り出されて何も出来ずに立ち尽くし、いきなり上級アイテムをゲットしたところで、自分のレベルが追いついていなければ全く使いこなせない。当たり前ですが、土台が出来ていない状態で上のステージに駆り出されても、本来のゲームを楽しみ尽くすことは出来ないのです。

 

どうしてモンハンの話をしているのかと言うと、先日のレッスンのある出来事で、「やっぱり自分を成長させるには、基礎を固めて土台をしっかり作るのが大事!」と思った時に、ふと頭を過ぎったからなんですが…。

 

先日のペン字のレッスンで、生徒さんから、

「最初にやった『ショートコース』のテキストをもう一度やってもいいですか?」

という要望がありました。

当書道教室のペン字コースは、

体験レッスン(90分)を受けていただいた後に、

漢字・ひらがなの基礎中の基礎を学べるショートコース(60分×全6回)を受講していただき、

その後、基礎に加えて、バランス良い文章の書き方を学ぶ実用コース(60分×月2回)に進むのが通常の流れなのですが、

実用コースに入って数ヶ月経っているこの生徒さんは、ひらがなをもう一度徹底的に学びたいということで、一段階前に戻って、再度ショートコースのテキストに取り組むことにしました。

レッスンを継続していくのにあたって、新たな課題が見つかるということは、技術がかなり上がってきている証拠。自分のレベルが上がるに従って「もっとここをこうしたい…」というポイント(=アラ)が見えるようになってきます。

当教室では、基本のカリキュラムは用意していますが、生徒さんそれぞれのスピードで、各自が設定したゴールを目指すことを大事にしています。レッスン内容もその人に合わせてカスタマイズしていることが多いので、誰かと賞や段級を争うこともありませんし、隣の人や周りの人を見て「あの人は上手いけど私は…」などとあせる必要も全くありません。

この生徒さんは、モンハンに例えると、充分な装備と実力を身につけてから万全の体制で狩りに出かけたい!ということなので、その体制を整えるまでには多少時間はかかるかもしれませんが、これからの狩りはきっと楽しいものになる(=基礎固めによってレッスンの成果は必ず出る)はずです。

自分を成長させるための基礎固め、土台作りをするためには、

・目標を設定する(「基礎を固めた先に何をしたいか?どうなっていたいか?」を考える)
・正しい基礎を身につける(間違った型をひたすら100回繰り返すよりは、正しい型を10回やった方が身に付く)
・細く長くで構わないから、身につけた基礎を反復練習をする(型を体で覚える)

・基礎が無意識に出来るようになるまで(自転車に無意識で乗れるようになった感覚…になれたらシメたもの)

・基礎を身につけたと思っても、もっと良い方法があるはず!と常に模索する

…ということが大事だなぁと。自分への戒めも十二分に込めて。

書道教室,恵比寿,渋谷区,習字,美文字,ペン字

会社を辞める決断をするまでの1週間、何をしていたか?

先週公開された及川智恵さんのインタビュー企画「生き方辞典」。「読みました!」という声を多くいただきました。ありがとうございます。

【生き方辞典1】不安なんて、どこにいてもつきまとうのだから(書家/書道講師 目時白珠さん)

あんなに「会社が嫌だ」「逃げたい」「つらい」と連呼していたのに、意外と元会社関係の方々の反応が多かったりして、正直驚いております。今も気にかけていただいて嬉しいです。

 

「会社を辞める決断するまでの1週間」が結構大きくフォーカスされていますが、自分でも記事を読み直している中で、具体的にこの1週間をどのように過ごしたのか思い出してきたので、振り返ってみます。

 

以下、だいたい時系列順です。

 

■過去に言われて嬉しかったこと、心の中で引っかかっていたことを思い出した

自分が切羽詰まっている状況に思い出したのが、仕事をしている自分とは全く違う視点から見て「人から自分がどう見えているか?」ということだったような気がします。どうしてもこういう時は、自分のダメさ加減を責めて視野も狭くなりがち。なので、過去を振り返りながら「自分の良いところ探し」のようなことをしていました。だいぶ、現実逃避的ではありますが…。

その時にふと思い出したのが、数年前にグループ展に出品した作品を見た方に「これ仕事にしたらいいのに!」と言われたことや、実生活で字を褒められたり何かと役立つ機会が多かったことなど。なぜか書道に関することがほとんどでした。

また、インタビューにもあった、好きなことを仕事をしている方々との出会いや知人の死など、「自分の年齢」と「年齢に合った生き方」みたいなものを何となく天秤にかけていたのもこの時期です。

 

■SNSを始めた

ほぼ時を同じくして始めたのがSNS。自分の創作意欲がむくむくと湧いてきていた時期で、見ず知らずの人が作品を見たらどんな反応をするのかしら?という興味が出てきたのと、作品をアップしてみたら?という勧めもあり、TwitterとFacebookのアカウントを取りました。

当時は書道で仕事もしていなかったし、作品を見てもらう人と言えば、グループ展にいらっしゃった方以外は特になかった状況。でも、この前の年に、当時勤めていた会社で作品を展示する機会があり、色んな評価をいただいたのが面白かった…というのも、SNSを始めたきっかけになっていたかもしれません。

 

■小旅行に出かけて頭がからっぽになった

この頃、仕事がクソ忙しい時期だったのですが、週末に旅行に出かけています。確か1泊2日くらい。小高い山を登って、近隣の神社仏閣を訪ねる以外は、古民家の宿で畳に寝そべりながらただひたすら「ぼーっと」して、美味しいご飯とお酒を楽しんでいました。本当に頭がからっぽになりました。

 

■書道で何かやれるかも?と思い始めてリサーチ開始

旅行からの帰路、普通は「リフレッシュ出来たから、明日から仕事を頑張るぞ!」とか「会社行くのしんどいなぁ…」となるんでしょうが、からっぽになった頭の中に最初に入ってきたのが「もしかして、書道を通じて嬉しかったことや役立ったことって仕事になるのかなぁ?」ということ。帰路もケータイで何かしらリサーチしてたような。すぐに頭の中でシミュレーションが始まりました。

「これ仕事にしたらいいのに!」と言われた当時、「いやいや、仕事だなんて…」と思ったまま数年寝かせていたことが、このタイミングで日の目を見ることになるとは…。

 

■「気力」と「体力」と「お金」のバランスを考えた

書道を仕事にするからには「続ける」ことが前提なので、この3つは考えながらリサーチ&生活シミュレーションをしました。この時に、会社をスパッと辞めて専門学校に1年通ってから始めたら出来るかもしれない…!という目途が何となく立ったような。でも、今思うとかなり雑なシミュレーションです。会社辞めたいから、そっちの方に寄せた、都合の良い解釈が多々(苦笑)

3つのうち「極端にどれかが突出している」とか「極端に不足しているものを補完できる術がない」という状況だと、勢い良く始めても、途中でポキンと折れてしまうかもしれない…と思っていました。お金がなくても、気力と体力で乗り越えられるということもあると思うのですが、私は3つのバランスを考慮しました。

こればっかりは、たらればの話になりますが、私の場合は、あと10年遅かったら、体力と気力が持たずにキャリアチェンジ出来なかったかもしれないなぁ…と、ぼんやり思ったりします。

 

■とは言え、考え過ぎてもしょうがないから、結局「勢い」で決めた

最終的には「まぁ、考えてばかりいてもしょうがないし、あとは学校に通いながら決めればいっか!」という、根拠のない自信で腹を括って、会社を辞めることにしました。

 

以上、ここまでで、だいたい1週間です。

 

会社を辞めて書道の仕事をするという話を周囲にした時は、そもそも書道をしていることを知らない人が大半だったので「ぽかーん…」とされたことが多かったのですが、書道をしていることを知っている人からは、

・その方が向いている気がする
・今がしんどそうだったから、女性らしさがある仕事でかえっていいかも
・ほらね

など、大して驚きもなく、意外にも「まぁ、そうだろうね」という反応でした。こういう反応があったのは本当に有難いことなのですが、これも「何とかなるんじゃない?」という根拠のない自信に(良い意味で)さらに輪がかかっている要因だったりしますし、今もしんどいことは多々ありますが、仕事をしていく上での大きなモチベーションになっています。

出来事の一つ一つは体に衝撃が走るほどの大きなことではないけれど、それを拾うかスルーするかで道が分かれていたように思います。

こうやって振り返ると、誰にも相談せずに一人で決めたのは確かにそうなのですが、その伏線として、色んな人や出来事が関わっているおかげで今があるなぁ…と、本当に感謝しています。

 

が、このやり方はオススメできるものではありません。だいたい生活シミュレーションが相当雑だし、家庭がある人は様々な要因が絡まるでしょうし…。

実際にギアチェンジするタイミングは人によって全然違うと思います。私はたまたま40歳でしたが、20代かもしれないし、60代を過ぎてからやってくる人もいるかもしれない。また、会社にいながらにしてやれること、いっそのこと辞めてからやった方がいいこと、という選択肢もあると思います。

考え方や生き方が多様化している現代社会では、今の場所にとどまる選択以外にも、あらゆる可能性を消さずに別の選択肢も頭の片隅に少し置いておく、ということは大事なような気がしています。

そして、いざという時、論理的な部分だけに頼らず、気持ちや直観で「エイヤ!」で物事を決められる覚悟、気持ちの高ぶりを寝かせずに勢いを大事にして突き進む、ということがあっても良いのかもしれません。

 

【退】
私の場合は、今までの場所を退くことも、退路を断つことも大事だったんだと思います。

筆文字,現代アート,書道